引っ越し

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といっても自分が引っ越しするわけではありません。

子どもの頃は友達が親の仕事で遠くに引っ越したり、大学卒業する頃は就職や地元に帰るのに引っ越したりして、仲良しだった友達と離れることは何度かありました。

ところが大人になると、というか僕のような音楽の仕事をしていると東京を拠点にしている音楽家は海外にでも行かない限りはほとんどの人が東京近郊にいて引っ越したとしても遠くに離ればなれになるなんてことはあまりありません。会社に勤めてる人は転勤がありますが音楽家は自分の活動拠点を動かさない限りは少し郊外に引っ越したとしても仕事場では会えるわけですから”お別れ”にはならないんです。

しかも僕は学生時代からずっと音楽の仕事しかしてこなかったので卒業してから音楽家、もしくは音楽業界関係の人以外と、知り合うことはあっても友達と呼べるような関係になることはありませんでした。

彼らと知り合ってもう何年経つだろう。といっても最初はたまたまひとりでふらっと入ったレストランのオーナーシェフとその奥さんのマダム。そこの料理と雰囲気がなんだかとても気に入ってそれからカミさん連れてちょくちょく行くようになり、そのうち話しをするようになり、といったって常連客とお店の人というだけの関係。ここまではよくあることですよね。

そのシェフは中野でイタリアンレストランを多いときは3軒、4軒だったか?を経営するベテランシェフで、味とその人柄で多くのファンがいました。

そう、僕が3年前からイタリアワインの新酒ノヴェッロの解禁祝いライブをやらせていただいている中野ジョヴァンニの赤坂夫妻です。

シェフはランチタイムとジョヴァンニが休みの日は自宅を改造したイサオキッチンという名で住宅地でレストランをやっていましたが予約制だしなんとなく敷居が高そうでそちらには行かずジョヴァンニに通っていたのですが、ある時ちょっとした記念にそちらを予約してランチを食べに行きました。住宅街の普通の民家の横に茂った樹のトンネルがありその奥がレストランスペースになっていて、テラス席と屋内と。テラスの奥には手作りのピザ窯。テラスの大きなテーブルの上も樹が茂っています。いっぱつでこの空間、ここが気に入ってしまいました。たぶん誰でもここを見たらなんて素敵なんだろうと感じるでしょう。でもランチにコースを食べるのはやはり贅沢なわけで、それからももっぱらジョヴァンニ通いでイサオキッチンには行きませんでした。

それから暫くしてある日「イサオキッチンでピザパーティーやるけど来ませんか?仲間内しか来ないから」と誘われカミさんと出かけました。実はイサオキッチンは家から歩いて20分くらいの近所でした。「そういえばCD出たんだっけ?ついでに何枚か持ってきてよ」って言われ5枚だけ持って行きました。着くとすでに何組か家族やカップルの方が来ていてそれぞれ紹介され、次々とピザを焼いてくれてワインを飲み、しばらくして人もわりと集まった頃「では改めて、今日は近藤さんのCD発売記念ピザパーティーにようこそ。思う存分飲んだり食ったりしてください。CD買うのも忘れずにね。」って。何のことやらわからなかったけど実はその日が僕のCD発売日で、それを知ってのサプライズパーティー。しかも自分たちの仲間や常連さんを集めてくれて。集まった人たちもその時に趣旨を知ったようでした。

涙出そうでした。嬉しかった。

集まった人たちもそれぞれ初めて会う方達も多いらしく、職業も画家やデザイナー、飲食店やってる人や怪しい会社の社長、など様々です。でもみなシェフとマダムが大好きな人たち。その仲間に入れてくれた、俺たちの仲間だよって、言葉はなかったけど迎え入れてくれたことが嬉しかった。「このオヤジ(シェフは僕より10歳くらい年上なのに酔っぱらうと僕をオヤジと呼びます。ってかこの時からですが)はただの酔っぱらいじゃなくてサックス吹けるんだよ。そこそこいい仕事してるみたい。」とみんなに紹介してくれました。

それからというもの、イサオキッチンには度々、なんてものじゃなくしょっちゅうお邪魔するようになりました。ジョバンニは若いシェフに任せイサオキッチンをメインにやり始めてからは、「終わってからおいでよ」とよく誘っていただき、僕がライブがある日でもお店が終わってからだからちょうどいい時間になるわけです。で、夜中に贅沢にもシェフの料理やまかないなどをいただきワインをいただく。明け方まで飲むことも何度もありました。

お互いお休みの日などは違う店に飲みに行くことも増え、多いときは週に3日くらい、それ以上かな、食事したり飲みに行ったりしてました。なんだかもう家族のような兄弟のような。僕のライブにも来てくれたり、僕が田舎に用事があって帰るときにも一緒に行ったり。

シェフは鹿児島出身で東京で自分の手で店を出し店を増やし自宅レストランをやり料理教室を開き、僕は人生の先輩としてとても尊敬していました。シェフも音楽一筋でやってきた僕をなにか認めてくれていたのでしょう。

シェフはひとつ満足すると苦労して成し遂げたものでもそれを手放してゼロから次のことにチャレンジするような人です。だからこそなのでしょう。ある時「鹿児島の実家、使ってないからそこでやろうと思うんだよね」って。2年ちょっとくらい前だったかな、話されてその時はへぇ〜ってな感じで、離れる実感なんてほとんどなかった。

離れて数十年経つ自分の故郷の田舎で、自分で野菜を作りながらヤギを育てそれでチーズを作り地元の食材で生ハムや薫製を作り自分のやりたい料理を自分のペースで出す、料理人としては最終的に行き着く目的地なのかもしれませんね。

先日、ついに赤坂夫妻は引っ越していきました。車で京都やら広島やら、温泉入りながらシェフ仲間の各地のお店に寄ってのんびり鹿児島まで行くそうです。夜中に出発だというので昼に会いに行った時にはあの素敵な空間のイサオキッチンももうなにも無くなっていてただの木造の古い民家、ここにあの空間があったなんて信じられない。シェフとマダムのセンスの良さ、そして二人で苦労されてあの空間を造り上げていたんだと、初めてそこを訪れたときよりももっと強く感動しました。

お二人のお陰でたくさんのことを学びましたし、たくさんの人と出会いました。そしてたくさんの料理とワインを共にさせていただきました。人生も折り返し点くらいになってこんなに自然に心から友達だと思える人に出会えるとは思ってもいなかった。しかもお互いの夫婦ともにそう思えるなんて。だからなおさら、この別れは辛いです。ま、死んじゃうわけじゃないからまた会えるんですけどね。

もちろんシェフとマダムの新しい門出ですから笑顔でお別れしました。頑張って欲しいです。僕も次に会った時に恥ずかしくない仕事ぶりでいなければいけません。頑張らなきゃ。

夜中1時に出発するというのでポットいっぱいの熱いコーヒーを差し入れしてがっつり握手して見送りました。

赤坂シェフ、マダム高子さん、頑張ってくださいね。そしてたくさんありがとうございました。

「CD発売記念ピザパーティー」とはまだ知らずの盛り上がる前

 

左:夜な夜な繰り返された飲み会。ある日の「パエリア焼くから食べに来いの会」で焼酎飲むシェフ

右:「僕と犬の誕生会」マダム手作りのケーキに「我ながらオイシそうにできちゃった〜」のマダム

 

そして別れの日。また近いうちにね。

 

 

 

 

 

 

2012年01月30日 月曜日 15:41 | "kazkondo"

Comments (5)

  • "よしあき" says...

    赤坂さん、遂に鹿児島に移動されたんですね・・・今年のノヴェッロディナーに参加出来なくて昨年のあの時以来お会いできなかったことが残念でなりません。

    とはいえ私も出張で鹿児島に行く機会が有りますから、赤坂さんが奥様と一緒に新しく作られるお店に行けることを楽しみにしたいと思います。
    素敵なお店の予感がプンプンします。

    近藤さんが鹿児島ライブがあって、スケジュールが合ったら一緒に行けたら良いですね。

    赤坂さん、近藤さん、頑張れ~(あっ私もね)

    Posted on 2012年02月04日 土曜日 15:03

  • "よしあき" says...

    近藤さん
    昨日は有難うございました。
    忘れられない誕生日となりました。
    今日も午前中からお忙しいのにおつきあい頂いて・・・

    因みにあの後はあのままでは終わりませんでした(笑)。
    楽しかったです。
    またライブハウスやコンサートでお世話になります!
    宜しくお願いします!
    取り急ぎ御礼まで
    畑谷

    Posted on 2012年02月11日 土曜日 15:28

  • "kazkondo" says...

    よしあきさん、
    誕生日の大切な時間にライブにお越しくださりありがとうございました。
    たくさんの人が集まって楽しかったですね。
    ケーキも美味しかったし。
    またぜひライブに来てくださいね。
    よい年になりますように。

    Posted on 2012年02月12日 日曜日 14:13

  • "赤坂 高子" says...

    早いものでこちらに移り住んで1年になろうとしています。
    わずか3~4年のお付き合いでしたが、すごく長い時間一緒に過ごしていた気がします。鹿児島での初めての年越しも「去年は六本木のSTBでカウントダウンだったね~」って懐かしく思い起こし二人で静かに正月を迎えました。

    お見送りして頂いた後、京都や倉敷に立ち寄りながら最後の九州道を走っているときに近藤さんのブログを見つけてしんみりしてたシェフの顔が忘れられません。私達も家族ぐるみでこんなに親しくしてた人って近藤さん夫妻くらいでしたから。鹿児島は遠いですが、もしこちらで仕事があったりするときは是非寄ってくださいね。
    ジョヴァンニみたいに、ここイサオクチーナでライブをお願いできるような店にしていきたいものです。
    また元気でお会いできる日まで。

    Posted on 2013年01月20日 日曜日 0:50

  • "kazkondo" says...

    あらマダム、お久しぶりです。
    そうかぁ、もう1年経ちますね。
    なんだか随分昔の話しのような。。。
    365日という時間はあっという間に過ぎてしまうのに1年前のでき事はなんだか昔話しのよう。不思議ですね。
    でもこの1年の間にも3回はお会いできましたね。
    オープンしたてのイサオクチーナも素敵でした!そのことをこのBlogに書かなきゃですね。

    今年も行きますよ!絶対!
    またシェフの料理と共に一緒にワイン飲めるのを楽しみにしています!

    Posted on 2013年01月20日 日曜日 1:19

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